ジャコウアゲハ

食草のウマノスズクサの葉裏に1個づつ、あるいは2~数個、時には20数個もまとめて産み付けられています。新芽と新葉(約6㎝の範囲)に36個の卵を発見した例もあります。形は特異で、頂部に1個の突起付着物をもつ球状で、同じ食草に産まれるベニモンアゲハの卵に比べ、本種は頂部突起がやや下方に曲がることと、高さ1.6㎜でひとまわり大きいことで区別できます。2産卵 (640x427)3タマゴ (640x427)

幼虫

孵化直後の幼虫は、接着面を残して卵殻をほとんど食べ、葉裏に静止位置を定めて葉縁から摂食します。複数の卵が同じ葉についた場合など、1~3齢幼虫に集合性が認められますが、成長するにつれて単独生活になります。ウマノスズクサは葉が小さくて少ないため、葉や軟らかい茎を食いつくし、太いツルや他植物上に身をさらしている幼虫や地面を放浪している幼虫を見かけることがあります。また、食草が残っているのに茎を食べている幼虫もいます。植物不足と思われる状態でもウマノスズクサ以外は食べませんが、同種の卵、脱皮前後の幼虫、サナギ、さらには他の幼虫から出た寄生蝿のサナギまで食べてしまうという「いかもの食い」の食性を示すことがあります。これはサナギの不整休眠とともに個体数調整に有利に働いていると考えられます。香川県における第1世代(4月中旬~6月上旬)の主要な死亡要因は(磯部宏治、1978)、卵期:風雨による物理的落下、1齢幼虫に食べられる、4~5齢幼虫の摂食にともなう落下、幼虫化したまま孵化せずに死ぬ。1~3齢幼虫期:ハナグモやアマガエルによる捕食、4~5齢幼虫による食草株の食いつくしによる餓死、脱皮の失敗。4~5齢幼虫期:食草の食いつくしによる飢え、脱皮の失敗などがあります。

幼虫の臭角は橙黄色で2~5齢幼虫の形態や色彩は区別点が見出せません。また、蛹化の場所はアゲハチョウ科として別に変わったことはありません。夏型を生ずる非休眠型サナギは食草や付近の植物の枝葉に、春型となる休眠サナギは食草をかなり離れて人家の壁や墓地の石碑、石垣、他植物に見出されることが多いです。小株になりやすいウマノスズクサを食草にしている北の個体群と、繁茂するリュウキュウウマノスズクサなどを食べる南の個体群との間に、幼虫の移動修正の差があるように思われます。蛹化前の垂直方向への移動性もかなりあるようで、地上付近から数メートルの樹枝上で蛹が発見されることがあります。018 (640x448)7前蛹 (640x449) DPP_0233 (640x449)

サナギ

DPP_0139 (640x448)サナギ修正 (640x449)

サナギ期は11~15日で、休眠するものは7~9ヶ月に及ぶものがあります。このように不整休眠は食草を食べつくして次代の生存が不可能になった場合の種の存続にも役立っていると思われます。各亜種間の形態的差異の有無については未詳です。蛹化時の吐糸色には白色と黒色があり、休眠サナギな橙色系、非休眠サナギは黄色系が多い傾向がみられます。

〈 天敵 〉

天敵にはマダラヤドリバエ、コキアシヒラタヒメバチ、クロスジヒラタヒメバチ、アゲハヒメバチが知られていますが、香川県では4~6月の調査期間中には、卵~サナギの寄生は認められなかった(磯部、1978)といわれています。東京珠動物公園でも他のアゲハチョウと違って本種には寄生はなく、幼虫やサナギはスズメも捕食しなかったといわれています。

 

〈 参考文献 〉

  1. 大戸 謙二・市川 俊英(1978)ジャコウアゲハの配偶行動、日本昆虫学会第38回大講演要旨8 日本昆虫学会
  2. 磯部 宏治(1978)ジャコウアゲハの生態学的研究-生命表分析- 同上43
  3. 西山 隆(1980)栃木県の蝶とその生活(その8)、月刊むし(116):12-17                       敬称略

ジャコウアゲハがなぜ姫路市蝶になったのでしょうか?

1.姫路城築城主の家紋が「アゲハチョウ」なのです。

姫路市のシンボルの国宝姫路城には、築城主池田輝政の家紋である「アゲハチョウ」の瓦紋が多数用いられています。

「播磨人の美的感覚はすごいで。姫路城の屋根瓦で桐(きり)の樹海(じゅかい)の上を何千、何万ものアゲハチョウが乱舞しているところを表しとんのや。その向こうで鯱(しゃち)が跳ねとるのや。瀬戸内海の鯨(くじら)を見て造ったと思うで!」(瓦職人として国の選定技術保存者の、故 小林 平一 氏 談)

アゲハチョウは形も大きくて、私たちの目によく触れる機会の多い美しい蝶です。また蝶の総称でも使われているように、蝶の代表とされています。

ジャコウアゲハはその仲間であり、姫路市とも多くの関係を持っています。DPP_0001 (640x449) 008瓦 (318x311)

ジャコウアゲハがなぜ姫路市蝶になったのでしょうか?

お菊さん22.サナギがお菊さんの化身と言われています。

今から約 450年前の室町時代、小寺氏が姫路城主であった頃、家来の青山鉄山は町坪弾四郎と相談して姫路城を乗っ取ろうとしました。城主はその計画に気付き、お菊を鉄山の女中として住み込ませて、鉄山たちの様子をさぐらせていましたが、このことを弾四郎に気付かれ、家宝の皿を一枚隠してお菊のせいにしました。その皿を割ったぬれぎぬを着せられたお菊は、姫路城内の松の木に吊るされ、斬り殺されて井戸の中に投げ捨てられたのです。城主はそのお菊の死をいたんで城内に手厚く葬りました。それから 300年近くたって、城下に不気味な虫が発生しました。実はこの虫がジャコウアゲハの幼虫(サナギ)なのです。サナギの形が口紅を付けたような赤い斑点があり、後ろ手に縛られた「播州皿屋敷」のお菊さんの姿を連想させます。その形状からお菊さんの化身とされ「お菊虫」と呼ばれています。

「大正から昭和の初めにかけて「大正から昭和の初めにかけて姫路城を訪れた観光客に、お土産として、一匹15銭で売られて産として、一匹15銭で売られていた」とも言われています。

また、志賀直哉の代表作「暗夜行路」のなかにも「お菊虫」のことが出てきます。4.お菊さん (287x640) サナギ修正 (640x449)

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