ジャコウアゲハ

出前ジャコウアゲハ教室を開催中

「生き物に学ぶ生物多様性プロジェクト~ジャコウアゲハを育てよう」の一環で開催している「出前ジャコウアゲハ教室」が先月の5月23日(火)の上菅小学校から始まり、昨日の八幡小学校での開催には「夢前川を美しくする会」の3名の皆さんにも参加していただき、今後の連係した活動で協力していただくことになりました。
特に今年はこのプロジェクトの取り組みが、40校・104クラス・3,555名の児童が参加することになり、その中でも自治会を中心にした活動が展開される校区もあり、益々楽しみになってきました

ジャコウアゲハ

ジャコウアゲハ属 Atrophaneura はインドから中国、日本、さらにスンダランド、フィリピン、セレベスにいたる東洋の熱帯・亜熱帯を中心に広く分布し、28種におよびます。おもな食草はウマノスズクサ科で、幼虫時代にその成分を体内に取り込み、「毒蝶」として擬態のモデルになっている種が多いと思われます。そのためか、成虫の飛翔はアゲハチョウ属やアオスジアゲハ属などに比べると、一般にゆるやかで、とても優雅です。幼虫は肉質刺状の突起をもち、葉裏にいて、若齢から終齢まで形態や生活様式に大きな変化のないものが多いが、若齢期に群居性を示すものがあります。成虫は食物として花蜜を求め、地表からの給水例は少ないようです。

ジャコウアゲハは日本におけるこの属の代表種で、中国、台湾、朝鮮半島から日本にかけて分布する、いわゆる西部シナ系(ヒマラヤ型)分布種です。成虫イラスト用

分布

14〈 分布・地形的異変 〉

国内における分布記録の北限は、日本海側では青森県岩崎村十二湖、秋田県能代市・大館市・高巣町・森吉蝶、太平洋側では岩手県内陸部の二戸市、海岸部の宮古市などす。関東や中部地方では標高700~800m以下の地に限られるが、近畿以西、四国、九州ではかなり生息地は広がります。

島嶼では佐渡島、伊豆大島、上津島、壱岐、怒涛列島、種子島、屋久島、奄美大島、徳之島、沖永良部島、与論島、伊平屋島、伊是名島、伊江島、久米島、渡嘉敷島、座間味島、沖縄本島、与勝諸島、宮古島、池間島、伊良部島、来間島、石垣島、竹富島、小浜島、西表島、与那国島、波照間島から記録があります。トカラ列島、喜界島、大東諸島では発見されていません。このように国内の分布はウマノスズクサ類の分布にほぼ一致しているようにみえます。すなわち、東北地方の分布北限地がウマノスズクサの分布に、津島や種子島の産地がオオバウマノスズクサのそれに限られること、分布空白地のトカラ列島、喜界島には食草が分布していないこと、あるいは他の地域でも生息地が食草群落の分布と強く結びついていることなどがその理由です。

地理的変異としては、♀の翅の地色が南方ほど濃くなる(黒化する)という傾向があり、九州以北の言明亜種 ssp.alcinous KLUG、屋久島亜種 ssp.yakushimana ESAKI & UMENO、奄美大島~久米島亜種 ssp. Loochooana ROTHSCHILD、宮古島・伊良部島z主 ssp. miyakoensis OMOTO、八重山諸島亜種 ssp. Bradanus FRUHSTORFER に分けられています。江島三郎氏(1981)によると対馬産は原名亜種とは一見して区別できるが、朝鮮半島産との差は明瞭でないといわれています。種子島にも少数生息するが、その特徴はまだ調べられていません。なお、幼虫についてもいくらかの差異が認められ、奄美諸島や沖縄本島産は九州以北のものに比べ、地色がやや赤味をおび、白色部が純白にならないなどの傾向があるが、個体変異も大きいようにみえます。

 

〈 周年経過 〉

北限地の東北地方では年2回(5~6月、7~8月)、関東から九州にかけては3回(4~5月、6~7月、8~9月)の発生が普通で、4回という記録(栃木県、四国南部)もあります。奄美諸島以南では周年発生を繰り返しているが、やはり発生の波があり、年中だらだらと見られるわけではありません。九州以北での越冬態はサナギですが、休眠性のあらわれ方に多少のバラツキがあります。東京多摩動物公園での飼育によると、夏~秋の幼虫は長日条件下においても越冬蛹になる傾向が強く、また休眠蛹を羽化させるには10℃(30日間)→5℃(30日間)→10℃(30日間)25℃の処理をすれば80%は羽化するという報告があります。

 

〈 生息地 〉

山林の林縁、伐採地、河川の堤防、海浜の林間・林縁、田や畑のあぜ、墓地、など食草のウマノスズクサさえあれば人家周辺(市街地を含む)と変化に富みますが、とくに河川沿いの産地は近年環境変化のために失われていく傾向が強くなっています。

食餌植物

ウマノスズクサ科の5種類が記録されています。東北地方まで分布しているウマノスズクサは北限地域の唯一の食草となり、本州、四国、九州の主要な食草の一つで、南限は奄美大島笠利ですが、トカラ列島、種子島にはみられず、食草として確認されているのは九州南端部までです。

オオバウマノスズクサは選好性の点で前種と変わらず、埼玉県、南関東から長崎・鹿児島両県まで各県で食草になっており、分布南限は屋久島です。両種が主要な食草となっている本州、四国、九州の各地では、オオバウマノスズクサが林縁・林間で、ウマノスズクサが伐採地、堤防、田畑のあぜ、墓地などの明るい乾燥した環境に分布している傾向が強いが、人的環境への適応に後者の果たしている役割は大きいように思われます。

ホソバウマノスズクサ(アリマウマノスズクサ)は近畿、中部、四国、九州などに生えており、食草として兵庫県六甲山や宝塚市、さらに屋久島で記録されています。島根県にはこのほかにマルバウマノスズクサが分布していますが、自然状態の食草としては記録がありません。飼育時に与えると幼虫は順調に育ちます。南西諸島、奄美大島から八重山諸島にかけてはリュウキュウウマノスズクサが食草となり、宮古島、伊良部島および尖閣列島(ジャコウアゲハは未確認)にはコウシュンウマノスズクサが分布し、宮古島では食草として利用されています。

このほか、ヒメカンアオイ、ニンジン、ウイキョウ、キハダ、カラスザンショウ、ミカン、ユリノキに産卵したが1齢幼虫は食べずに死んだという記録(阿江,1974)、オシロイバナやキツネノマゴに産卵したが幼虫は食べなかったという記録(矢田,1975)があります。ウマノスズクサ1 (640x448)

成虫

どの発生期の成虫も明るい環境を好み、林縁から低木林、草地、耕作地などを低く、緩やかに飛びます。山頂占有性や蝶道をつくる性質はあまり見られません。訪花植物として記録されたものは多く、春はツツジ、ヤブウツギ、ニシキウツギ、トベラ、キイチゴ類、ミカン、スイカズラ、ダイコン、レンゲソウ、キンセンカ、ネギ、タツナミソウなど、夏は三尺バーベナ(柳花笠)、リアトリス、ランタナ、ビジョナデシコ、アザミ類、ネムノキ、クサギ、アカメガシワ、ヤブカラシ、ノブドウ、イヌザンショウ、カラスザンショウ、オカトラノオ、ユリ、ヤマノイモ、テリハアカショウママルバハギ、ヘクソカズラなど、自生種・栽培種、草木・木本を問わず広い食性を示します。

吸蜜は早朝や日没後のたそがれ時に行われることが多いですが、地表での吸水性は確認されていません。このように食性についてのアゲハチョウ属との比較研究は今後の課題となっています。

配偶行動については、香川県における調査例(大戸・市川、1978)があり、それによると、♀の交尾率は60~80%であること、♂が早朝に食草群落付近で活動していることから、交尾は早朝に成立する可能性が大きいこと、♂は視覚によって♀を認知するが、翅の色が黒いほど誘引されやすく、赤斑の存在は必要でないこと、♂が腹を曲げて交尾を試みるダミーは身体が軟らかいという共通性をもつこと、♀の交尾行動の解発には♂特有の匂いは関与せず、前翅前縁部に対する接触刺激が解発因となっていることがわかったといわれています。このほかの観察例からも、交尾は♀の羽化直後に行われることが多いと思われます。自然状態での雑交例としてはジャコウアゲハ♂×モンキアゲハ♀、ジャコウアゲハ♂×クロアゲハ♀の記録があります。

産卵しようとする♀はいろいろな植物にふれながら飛びまわり、食草が見つかると葉裏や葉縁につかまるようにして腹部を葉裏にまわし、V字形に開いた翅を小刻みに震わせながら1卵ずつ産み付けます。複数の卵を連続して産む場合は葉裏に少しずつ離して並べますが、稀に積み重ねて産み付けることがあります。なお、このような摂食や交尾・産卵の場所と静止・休息場所は必ずしも一致しないようで、堤防上で活動していたほとんど全部の個体が、雨が降りそうになったら、急に近くの竹やぶに移って高所に静止し、雨がやんでから再び堤防へと次々と飛び出してきた例があります。

♀の移動・分散性はかなり強いようで、食草を植えておけばよく幼虫がついているのを見ることができます。東京の小石川植物園でも一時的な発生が認められましたが、この時の幼虫を飼育したら♀のみ10頭が羽化した記録(葛谷、1973)があります。25オス (640x449)24 (640x449)

 

 

 

 

 

ジャコウアゲハの雄(左)と、ジャコウアゲハの雌(右)

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